胸腔外科
先日、尊敬する先生のセミナーに参加してきました。
今回のテーマは 「胸腔外科」 でした。
胸腔外科とは、胸の中(胸腔)にある臓器を手術で治療する分野です。
具体的には
・肺腫瘍
・胸腺腫などの胸腔内腫瘍
・一部の心臓病
・先天性疾患(右大動脈弓遺残など)
といった病気に対して、胸を開いて手術を行う外科分野になります。
「胸を開く手術」と聞くと、
とても難しい手術というイメージを持つ方も多いと思います。
実際、一次診療の動物病院ではあまり行われていない分野でもあります。
しかし、実際の手術手技そのものは、必ずしも極端に複雑というわけではありません。
例えば肺腫瘍の場合、基本となる手術は 肺葉切除 と呼ばれるもので、
腫瘍ができている肺の部分を 根元で結紮して切除する という手術です。
もちろん慎重さは必要ですが、手技そのものは外科の基本に忠実な手術でもあります。
また胸腔内は腹腔内と比べると、
手術中に予測できない合併症が比較的起きにくいという特徴もあります。
それでも多くの獣医師が胸腔外科に対して感じているのは、
「難しい」というよりも、むしろ “怖い”という感覚かもしれません。
理由としては
・心臓や肺など命に直結する臓器を扱うこと
・麻酔中に呼吸や循環状態が変動する可能性があること
・もし合併症が起きた場合のリスク
・手術中にイレギュラーが起きたらどうしようという不安
・肺腫瘍は腫瘍全体の約1%と稀で、経験を積む機会が少ないこと
などが挙げられます。
獣医師も人間なので、こうした不安や恐怖を感じることはあります。
私自身はこれまでに
・肺腫瘍
・肺膿瘍
・右大動脈弓遺残
といった胸腔外科手術の執刀経験があります。
勇気を出して手術ができたのも、一緒に手術を行ってくれた同僚の獣医師や看護師のおかげでもあり、本当に感謝しています。
そして、初めて胸を開いたときのことは今でもよく覚えています。
不安よりも先に感じたのは、ちょっとした感動でした。
胸の中には “生の中枢” とも言える心臓があり、その心臓が今まさに拍動している。
「この子は今、生きている」
それをまざまざと見せつけられるような、そんな感覚でした。
肺腫瘍の手術は、症例によっては 根治的な治療を期待できることも多い重要な手術です。また動脈開存症という心臓の病気も手術で根治可能です。うちの看板犬ぱねも実はこの病気で、今は手術をして健康そのものです。
そのため、開胸手術は獣医師としてできるようになっておきたい手術の一つでもあります。
ただし、もちろん 何でもかんでも手術すればよいというものではありません。
例えばパグなどの短頭種では、
左肺前葉の気管支に解剖学的な異常があることも多く、
もともと呼吸機能が制限されている場合があります。
そのようなケースでは、手術を行うべきかどうか慎重に判断する必要があります。
また術後には肺水腫などの合併症が起こる可能性もあるため、
・術前評価
・麻酔管理
・術後管理
・トラブルが起きた場合の準備
などを含め、獣医師と看護師がチームとして一丸となって治療に臨むことがとても重要になります。
胸腔外科は決して簡単な手術ではありません。
しかし、しっかり準備を行い正しい手技で行えば 一次診療の動物病院でも実施可能な手術でもあります。
そのために必要なのは
・正確な診断
・解剖学的知識
・外科手技の熟練
・麻酔管理
・チームワーク
です。
今回のセミナーでも多くのことを学ばせていただきました。
これからもさらに勉強を重ね、
飼い主様が安心して当院に任せていただけるよう、
日々努力していきたいと思います。
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