もくじ
Toggle脾臓のできもの(腫瘤)について
〜見つかったときに、どう考えるか〜
健康診断や超音波検査で
「脾臓にできものがあります」
と言われると、多くの飼い主さんはとても不安になります。
今回は**脾臓の腫瘤(しゅりゅう)**について、
- 脾臓はどんな臓器なのか
- 脾臓にできる腫瘤の内訳
- 悪性腫瘍が疑われる場合の考え方
- 手術の意味はあるのか
- 脾臓は取っても大丈夫なのか
を、できるだけ分かりやすくお話しします。
脾臓とはどんな臓器?
脾臓はお腹の左側にある臓器で、普段あまり意識されることはありません。
主な役割は
- 古くなった血液(赤血球など)を処理する
- 血液を一時的に貯める
- 免疫に関わる働き
つまり血液と免疫に関わる臓器です。
「なくても生きていける臓器」と言われることもありますが、
決して“不要な臓器”ではありません。
脾臓にできる腫瘤の内訳
脾臓にできる腫瘤は、大きく
- 良性の腫瘤
- 悪性の腫瘤
に分かれます。
実際には
- 血腫
- 結節性過形成
- 良性腫瘍
- 悪性腫瘍(特に血管肉腫)
などさまざまですが、画像検査だけで良性・悪性を完全に見分けることは困難です。
脾臓の悪性腫瘍で最も多い「血管肉腫」
脾臓の悪性腫瘍で最も多いのが血管肉腫です。
血管肉腫の特徴は、
- 非常に転移しやすい
- 抗がん剤が効きにくい
- 発見された時点で、すでに転移していることが多い
といった点です。
報告によって差はありますが、
発見時にすでに転移している可能性は約60〜80%
とも言われています。
では、手術をしても意味がないのか?
「どうせ転移しているなら、手術をしても意味がないのでは?」
そう思われる方も少なくありません。
しかし、必ずしもそうではありません。
実際に私自身の患者さんでも、
早期に発見し、脾臓摘出手術を行い、長期間元気に過ごしている症例を2例経験しています。
もちろんすべての症例が同じ経過をたどるわけではありませんが、
早期発見・早期手術によって救える時間が確実に存在する
というのは事実です。
放置するリスク:腹腔内出血
脾臓腫瘤のもう一つの大きな問題が
腹腔内出血です。
脾臓の腫瘤は、
いわば**「お腹の中に爆弾を抱えている状態」**
とも言えます。
いつ破裂して大量出血を起こすか、誰にも予測できません。
腹腔内出血を起こした脾臓腫瘍の内訳
論文報告では、
腹腔内出血を起こした脾臓腫瘍の多くが悪性腫瘍
であることが示されています。
2025年5月に発表された論文でも脾臓腫瘍で腹腔内出血を起こした症例のうち35.7% は良性病変、64.3% は悪性腫瘍となっています。
つまり、
「悪性腫瘍の場合、突然腹腔内出血を起こす可能性が高い」
というのが現実です。
そのため、悪性が疑われる場合でも脾臓摘出手術には十分な意味があります。
実は「良性」でも出血することがある
ここで、ぜひ知っておいてほしい大切な点があります。
それは
良性の腫瘤でも腹腔内出血を起こす可能性がある
ということです。
先程の論文でも腹腔内出血起こした症例のうち35.7%は良性の腫瘍でした。
実際、
「特に症状はなかった」
という患者さんの脾臓を摘出した際、
- 腫瘤の周囲に癒着があり
- 過去に破裂・出血していた可能性が強く疑われた
という症例を私は経験しています。
これは気づかれないうちに、すでに一度破裂していた可能性がある
ということです。
だからこそ、摘出するメリットがある
以上のことから、
- 悪性であっても、早期手術で得られる時間がある
- 放置すると突然の大量出血のリスクが高い
- 良性でも出血する可能性がある
という理由から、
脾臓に腫瘤が見つかった場合、良性・悪性に関わらず摘出にはメリットがある
と考えています。
脾臓は取っても大丈夫?
脾臓は
摘出しても生きていける臓器です。
ただし、
取っても何も影響がない臓器ではありません。
脾臓を摘出すると、
- 血球数が増加しやすくなる
- 免疫機能が低下する可能性
などが考えられます。
動物医療ではあまり強調されることはありませんが、
人の医療では
脾臓摘出後発熱(重篤な感染症)
という緊急状態が知られています。
そのため、
脾臓摘出後は、免疫や体調の管理をしっかり行っていくことが大切です。
最後に
脾臓の腫瘤は、
「すぐに命に関わらないように見える」
一方で、
突然の出血という大きなリスクを抱えています。
見つかったときにどう判断するかで、
その後の時間が大きく変わることもあります。
不安なことがあれば、
「様子を見る選択」「手術をする選択」
それぞれのメリット・デメリットを一緒に考えていきましょう。ぜひご相談ください。
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