異物による腸閉塞の手術(腸切開術)は、私が特に得意としている手術のひとつです。
異物が胃を通過して小腸に詰まってしまうと、**腸閉塞(イレウス)**を起こし、命に関わる状態になることがあります。
もくじ
Toggle犬・猫で多い異物の種類
腸閉塞を起こす異物は動物種によってある程度傾向があります。
- 犬:靴下・タオルなどの布製品、種、トウモロコシの芯など
- 猫:ジョイントマットなどのウレタンフォーム、紐類 など
これらは繰り返し誤食されやすい傾向にあります。
放置するとどうなる?
腸閉塞を放置すると、嘔吐を繰り返し脱水を起こすだけでなく、
詰まった部分の腸が壊死して**腸に穴が開く(穿孔)**こともあります。
そのため、外科手術による摘出が必要になるケースが多いです。
腸閉塞の手術(腸切開術)の流れ
手術では、閉塞部を切開して異物を取り除き、再び腸を縫合して閉じます。
この「縫合」が手術の中で最も重要な工程です。
腸の構造は内側から「粘膜 → 筋層 → 漿膜」となっていますが、切開すると粘膜が反転して外に出てきます。
この粘膜をしっかり内側に戻さないと、縫合部分がうまく癒合せず離開(裂けてしまう)リスクが高まります。
例えるなら、唇の内側のような湿った粘膜同士はくっつかないということ。
だからこそ、縫合で粘膜を確実に内側に戻すことが重要になります。
縫合法と手術の“コツ”
腸を内反(内側に折り込む)させる縫合法としては、
ギャンビー縫合やアルベルト・レンベルト縫合などがあります。
しかし、どちらも手技がやや複雑で、手数が多くなるため熟練が必要です。
そこで、私が尊敬している HJSセミナーの中島先生から教えていただいた
「簡単で、確実に、きれいに縫えるコツ」が非常に役立っています。
(※詳しい手技はセミナーで教わる内容のためここでは割愛します)
この方法を使うことで、
- 短時間で縫合できる
- 腸の乾燥やつまみ過ぎによるダメージを減らせる
- 麻酔時間を短縮できる
- 術後の腸の回復が早くなる
- 離開などの合併症リスクを下げられる
といったメリットがあります。
中島先生はこうおっしゃいました。
「コツを知っていれば、100年間ギャンビー縫合を練習した外科医にも勝てる手術ができる。」
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、
実際にやってみると“なるほど”と納得できる言葉です。
教科書では得られない「技術」
こうした“手術のコツ”というのは、教科書をどれだけ読んでも身につきません。
先輩の先生方が実際に悪戦苦闘して得た経験の積み重ねがあって初めて伝えられる技術です。
それを学べるセミナーや機会があることに、本当に感謝しています。
これからも、より良い手術を行うために、
学び、練習し、努力を続けていきたいと思います。



