もくじ
Toggle症例報告ブログ:マイボーム腺腫の手術
今回の症例報告のテーマはマイボーム腺腫です。
先日、上眼瞼にマイボーム腺腫が形成された症例が来院されました。高齢の犬猫で比較的よく遭遇する眼瞼腫瘍のひとつで、命に直接関わることは少ないものの、放置することで日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
マイボーム腺腫とは
マイボーム腺腫は、眼瞼に存在するマイボーム腺(脂を分泌し涙の蒸発を防ぐ腺)から発生する良性腫瘍です。犬では特に多く、加齢に伴って発生率が高くなることが知られています。
良性腫瘍であるため、
- 急激に全身状態を悪化させることは少ない
- 痛みや症状が軽度なうちは経過観察とされやすい
という特徴があります。
しかし一方で、発生する場所や大きさによっては問題を引き起こす腫瘍でもあります。
マイボーム腺腫が引き起こす問題
マイボーム腺腫は、
- 位置によっては瞬きのたびに角膜をこすり、角膜潰瘍や慢性的な角膜炎の原因になる
- 違和感から目を気にして掻いたりこすったりし、出血や二次感染を起こす
といったトラブルにつながることがあります。
また、「命に関わらない腫瘍」であるがゆえに、
気づいた時にはかなり大きくなっている
というケースもしばしば見受けられます。
眼瞼腫瘍の手術で大切なこと
先日の頭部の皮膚形成外科セミナーでもお話ししましたが、眼瞼の手術は単に腫瘍を取ればよい手術ではありません。
眼瞼は、
- 角膜を保護する
- 涙液を正常に広げる
- まばたきを成立させる
といった重要な機能を担っています。
そのため、
- 腫瘍をしっかり摘出する腫瘍学的な考え方
- 眼瞼の機能を温存しつつ、見た目もきれいに仕上げる形成外科的な技術
この両方が求められます。
腫瘍が大きくなればなるほど、
- 切除範囲が広がる
- 縫合が難しくなる
- 術後の仕上がりや機能に影響が出やすくなる
ため、手術の難易度は確実に上がります。
今回の症例
今回は、経過観察の間に徐々に大きくなってしまったマイボーム腺腫に対し、当院で外科的切除を行いました。
手術前

上眼瞼の目じり側に腫瘍が確認できます。位置的に角膜への接触リスクがあり、今後のトラブルが懸念される状態でした。
手術直後

眼瞼の縫合には、髪の毛のように細い縫合糸を使用します。
切除後は、
- 切った端と端に段差が生じないよう
- 眼瞼のラインを意識しながら
丁寧に縫合を行います。
術後は、掻いたりこすったりしないように硬めのエリザベスカラーを装着し、患部の保護を徹底します。
抜糸後

抜糸後の状態では、
- 眼瞼に段差はなく
- 非常にきれいに治癒
してくれました。機能面・見た目の両方で良好な結果が得られた症例です。
まとめ
眼瞼腫瘍の手術は、
腫瘍学的な摘出 + 美容整形学的(形成外科的)な知識と技術
が求められる分野です。
見た目が美しく治ることは、
- 動物本来の眼瞼機能を維持する
- 術後の違和感やトラブルを減らす
- 飼い主様の心理的な負担を軽減する
という点でも非常に重要です。
これからも、動物と飼い主様の双方にとってより良い医療を提供できるよう、日々研鑽を重ねていきたいと思います。
#手術 #眼瞼 #マイボーム腺腫 #まぶたの腫瘍 #皮膚形成 #焼津 #なないろ #動物病院



